私の夫の場合は、そのもの忘れと同時に、学習能力が少しずつ衰えていました。しかし、これも当時はあまり気づかなかったことです。日常生活には何も問題はありませんし、会話も普通にできましたので、そこまで私も見抜くことができなかったのです。
しかし、今から思えば、あれは一種の学習能力の低下なのではないかと思われることがありました。たとえば、何か用事があって台所に行ったものの、実際に台所に行くと、何をしに行ったのか忘れてしまうというようなことです。若い頃はまったくそういうことがなかっただけに、私は驚いてしまいましたが、人間誰でもそういうことはあるので、その頃はあまり意識をしていませんでした。
正直に言うと、心のどこかで意識はしていたものの、夫が呆け始めたことを認めたくないという気持ちもあったのかもしれません。いずれにしても、私はそのとき夫がすでにアルツハイマー病に犯されつつあるとは思いもしませんでした。
夫は次第に目標に対してプランを立てたり、スケジュールを立てたりすることができなくなってきました。夫はドライブが好きでしたので、休みのたびにどこかへドライブに行きました。しかし、その頃にはもう、ドライブの予定を立てるのが面倒なようなそぶりを見せました。私は単に仕事の疲れからドライブに行きたくないのだと思っていましたが、実際には、夫は将来的な予定を立てることが困難な状態にあったのです。
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