病院通いは続いていましたが、頭痛のもの忘れは一向に治らないようでした。私は若年性老人性痴呆症は、一種のもの忘れの激しいもので、特に心配はいらない、時間が解決してくれるはずだと思い込んでおりましたが、それは大きな間違いだということに、後で気づかされることになります。
ある休日、昼食の用意をしようと思い、夫に「今何時?」ときいたとき、夫は「6時10分」と答えました。私は何を冗談言っているのだろう?と思い、さして気にもしませんでしたが、数日後、就寝しようと思ったときに再び「何時?」と聞いたところ、11時半を、「4時2分」と答えたのです。私ははっとして夫の顔を見ました。どことなくそれまでの夫とは違うような気がしました。
私は夫がとんでもない病気に犯されていると感じました。そのときになって思い返すと、思い当たるフシはいくつもありました。買い物を頼んだときにおつりを間違えたり、自分の携帯電話の番号を言えなかったりする場面が続いたのです。
私は慌てて夫とともに病院を訪れ、先生に事情を話しました。そして、診断の結果、夫はアルツハイマー病に犯されていることが判明しました。
それまでまさか夫がアルツハイマーだとは思ってもいませんでしたので、私は一体どうしたらいいのかわかりませんでした。夫は数ヵ月後に辞表を出し、退社しました。治療に専念するためです。それから私たちの闘病生活が始まったのです。
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